多段型潜熱蓄熱式熱交換システム向け新蓄熱物質の探索と熱物性評価

摘要

近年，我が国における季節間や昼夜間のエネルギー需要差は拡大の一途を迪っており，エネルギーの有効利用に関する技術革新は昨今の環境問題と相まって喫緊の課題となっている.熱エネルギー貯蔵技術には，物質の相変化を利用した潜熱蓄熱がある.本研究では，作動流体として常温域に相変化特性を有する脂肪酸の混合物に着目した.これらの物質は，過冷却が小さくて扱いやす<,人体に影響が少ない潜熱蓄熱物質である.ここでは，小規模工場や家庭などから排出される低位熱エネルギーを有効利用する新たな多段型潜熱蓄熱式熱交換システムの確立へ向けて，潜熱蓄熱物質としての力プリン酸，ラウリン酸，ミリスチン酸の相互混合物に関する熱物性値（密度，粘度,融点，凝固点，過冷却度）の同定を試みた.その結果，混合脂肪酸に関する凝固·融解特性や熱物性値を提示するとともに，混合モル比によっては凝固点·融点が制御可能なことを提示した.