吸引工具における電解液流れと電解加工特性の関係

摘要

電解加工の長所として，金属材料の硬度によらず，高い加工速度と優れた加工面品質を実現できることが上げられるが，加工間隙で発生する気泡や電解生成物が電流を妨げるため，均一な極間距離を得ることが難しく，加工精度が悪く,加工プロセスが安定しにくい.また，廃棄物が環境に悪影響を与えるなどの欠点によりマイナスのイメージがある.筆者らは，電解加工の精度向上と電解液の飛散防止のための手法として，吸引工具を用いた電解加工法を提案している.本加工手法は吸引により，極間にのみ電解液が存在するため，加工領域を限定できるとともに，電解液が周囲に飛散しない.これまでに筆者らは，吸引工具を用いた加工において以下に挙げる問題点があることを明らかにしている.(1)極間には空気が多分に吸引され，電解液の割合が小さいと加工精度が悪化する.（2)加工深さが深くなると加工精度が悪化する.加工精度が悪化する原因は，加工中に極間から漏れ出す加工生成物と，極間に存在する外部から吸引された空気であると考察しており，吸引に使用するポンプの吸引圧力を変化させることで改善は見られたが，効果的な解決策はいまだ明らかになっていない.なお，加工生成物の漏れは，加工開始初期には見られず，ある程度加工が進行すると生じるため，液の流路の変化が影響を及ぼしていると考えられる.また，電解液の吸引方式や吸引圧力によって外部から極間に吸引される空気量，そして加工特性に大きく影響する.そこで，高速度ビデオカメラを用いて，極間における電解液や空気の流れを観察し，加工生成物が漏れ出す原因を調査した.また，吸引圧力を変化させて加工実験を行い，吸引圧力の変化が加工特性に及ぼす影響を調査した.なお，数値解析と加工実験により，吸引方式が電解加工特性に及ぼす影響を調べた.本記事では，これらの研究内容を紹介する.