絶縁性材料の放電加工に関する研究

摘要

私が初めて放電加工機を用いたのは，学生時代の研究で鉄単結晶の切り出しに用いたワイヤカットである．当時はワイヤを巻き取り何度も使用していたので，ワイヤが古くなると断線が生じる頻度が上がり，断線のたびに結線に苦労した記憶がある．今から考えると，指導教官，東京工業大学の中村正久先生の先見性と新しい物好きが，放電加工との関わりの第1歩となったことになる．元々の専門は，金属材料の変形·破壊および音響波(Acoustic Emission)に関することであり，放電加工は単に旋盤等と同じ材料加工の1手法との認識であった．1985年から約2年間，当時の西ドイツに留学していた．この時の毛利先生との偶然の出会いが，現在行っている絶縁性材料の加工に繋がる．本原稿では，これまでの研究の変遷を思い出しながら，絶縁性材料の放電加工に関する過去，現在と今後の展望を書かせていただくことにする．