公益通報者保護法と企業の内部通報システム

摘要

2000年から2002年にかけて企業の不祥事が連続発生した。 特に生活に密接した商品·ービスである，自動車，食品，電力であったことにより，消費者の企業に対する信頼が大きく揺らいだ。 「企業は利益追求のためには，法違反であるクレームを隠ぺいし，食品の表示を偽装し，輸入肉を国産にして公金を詐取し，原子炉の安全報告をごまかすのか」といった救いようのない怒りが蔓延したのである。更にこの企業の不正発覚が，行政の監視によってではなく，従業員からの内部告発によって顕在化したことが，社会的衝撃を一層大きくした。行政の監督も，内部の意図的な不正を摘発することは困難であり，まして消費者が商品の偽装表示を発見することは不可能だということに気付いた。企業が不正に手を染めていることを知りうるのは，内部にいる従業員しかない。 ここに初めて企業の不正を正す「内部告発」の重要性が，日本社会にも認識されるようになったのである。 このように“情報弱者”である消費者の味方として，内部告発者を歓迎するムードが出てきたが，過去の内部告発者は企業内で差別やいじめで苦しhでいることも分かってきた。 更に他国では，このような組織の報復を禁止し，告発者を保護する法律があり，公益のために内部告発に踏み切った人を差別してはならないとする制度が整備されているという情報が伝わってきた。このようにして，企業の不祥事によって，日本も内部告発者保護が必要であるという意識が高まってきたが，アメリカやイギリスでも，企業や行政機関の不正行為という事実が発端となって立法化されていったのである。