現代左官事情その56「建築と左官」

摘要

西棟は、元一の母の暮らしの場である京間の数寄屋造りであり、先祖をまつる仏間を備えている。外壁仕上げは錆聚楽壁で、別名ホタル壁という。 玄関の壁は稲荷安楽で、床は那智黒石埋め込み仕上げであ一る。 このように粒形のそろった漆黒の那智黒石は現在では手に入らないものになった。 八畳半の間は左側奥に水屋をもち、茶室としても使用できる。床間脇の天井の縁に通常は2本の木を直角に組むところを、「ひなどめ」という1本の木を曲げる技法が用いられている。 壁は大阪錆である。 7畳の間には黒差し天王寺が塗られており、建設当時の写異では濃淡がみられないが、経年変化の酸化の違いによって、くっきりとみられるようになった。 いつ頃からこのような状態になったかは、定かではない。 12畳の間は稲荷繁楽で、仏間は黒差し天王寺仕上げとなっている。