Mobius芳香族性

摘要

（4n＋2）個の打電子をもつ平面環状共役系では，芳香族性が発現し系のエネルギーの安定化をもたらす。一方，4n個のπ電子をもつ場合には反芳香族性を示す。いわゆるHuCkel則である。これに対して，1964年Heilbronnerは，Mobiusの帯状の共役系が4n個のπ電子をもつ場合に芳香族性が現れると予言した。それ以来，Mobius芳香族化合物を合成しようとする研究が行われてきた。しかし，Mobius芳香族性を実現するためには，p軌道の重なりを保持しつつ方共役系をMobiusの帯のようにねじる必要があるため，その実硯は非常に困難であった。しかし，2003年Hergesらは，弱いMobius芳香族性をもつ分子を合成することに成功した。その後，大須賀やLatos－Grazynskiによって明確なMobius芳香族性をもつ分子が合成された。これら一連の研究によって，Heilbronnerの予言が正しかったことが実証された。