分散型熱物性データベースの開発（13）－物性相関に基いたデータ整合性検証

摘要

産業技術総合研究所は1997年より分散型熱物性データベース[1]（以下，熱物性DBと呼ぶ）の開発を始め，2003年にインターネット公開を開始した．現在3,600物質·材料に関し，合計11,500件(グラフ1本に対応するようなデータを1件とカウント)の熱物性データを公開している．熱物性DBに収録されたこれらの熱物性データは，Webブラウザ向けのWeb版閲覧システム"TPDS-web" [2]より，誰でも無償で閲覧可能である．熱物性DBの収録データの信頼性は基本的に出典における不確かさ·誤差情報に基づいている．しかしながら，同じ材料で登録された熱拡散率，熱伝導率，比熱容量データの間で整合性が確保されているか，どれくらいの不確かさを考慮すればよいかといった情報は提供されていない．こうしたデータ整合性評価は熱力学の分野でいち早く取り組まれており，NIST ThermoData Engine[3]においては，システマティックな検証方法[4]が確立されている．固体材料の熱輸送特性におけるデータ整合性検証はMunroの著書「Data Evaluation Theory and Practice for Materials Properties」[5]が詳しく，物理法則，定義などに基づいて評価を進めるアプローチが詳述してある．しかしながら，固体材料の熱輸送特性において体系的にデータ整合性の検証を実施したデータベースは著者の知る限り存在しない．