地球環境モニタリングのための海水密度の精密計測 第2報：液中秤量装置による絶対測定

摘要

現在問題になっている気候変動を把握する場合，その要因が大気によるものか，または海流によるものかを判断するためには，わずかな海水温の変化とそのダイナミクスの正確な把握が不可欠である．世界中の海で海水の流動をトレースすることは困難であるので，もっぱら数値シミュレーションによる予測に頼ることになる．これに必要な物性の基準として海水の状態方程式があるが，最新の式であるTEOS-10には，もとになった海水密度データによるものと思われる系統誤差が含まれていることは前報に述べたとおりである．本研究の第一報では，海水密度の正確な計測の基準となる，海水密度標準物質の供給を目指し，測定不確かさ1ppmの目標を達成しうるいくつかの計測手段についてレビューした．今回の第二報では，その中から液中秤量法を採用し，海水密度校正装置を開発したのでその内容について説明する．