進化する超音波加工技術：超音波振動を援用したダイヤモンド電着工具による金型鋼の鏡面仕上げ

摘要

現在、携帯電話やモバイル機器などの意匠性の高い筐体（精度は中程度であるが、人間の感覚でとらえた「見た目」が最重要される）を射出成形するための金型製造においては、放電加工や機械加工による荒～中仕上げの後、手仕上げによる最終研磨工程が行われる。 しかし、手仕上げは多くの時間を要するために、金型は数日単位の製作日数が必要である。 また、手仕上げ加工は定圧/定位置加工が混合した加工原理であるので、加工圧力の高まる凸部が選択的に加工される。 その結果、手仕上げ工程の取りしろが多くなると、手仕上げ加工作業が困難になるだけでなく、前加工の機械·放電加工で得られた平面度が劣化したり、角部がくずれたりする。 本研究では、切れ刃として優れた特性を有するダイヤモンド工具を用いて、金型鋼の鏡面仕上げ加工を行う。 一般的に、鉄鋼材料の加工においては、加工時の発熱による熱化学反応により工具磨耗が激しくなり、実用的でないと言われている。 そこで、工具磨耗を低減し、良好な仕上げ面を得る技術を確立するために、超音波援用高精度加工に着目した。 本解説においては、60kHzの軸方向超音波振動を援用したダイヤモンド砥粒電着工具による金型鋼の平面仕上げ試験を行い、機械加工のみによる金型仕上げ実現の可能性を紹介する。