超音波基礎：位相共役波を用いたCモード画像装置による生体試料観察

摘要

現在、超音波顕微鏡などの走査型Cモード超音波画像装置は、固体材料の機械的性質の分析や非破壊検査に対して威力を発揮している。 特に、表面を平坦に加工した試料に対しては非常に高品質の画像が得られるため、定量的な分析も可能である。 しかし、生体試料の分析に関しては、他の画像装置に比べ普及しているとは言い難い。 超音波像では光学像では得られない組織の弾性的性質が観察でき、染色が不要であるため迅速性を必要とする術中組織観察への応用も期待されているが、画像のコントラストが何を表すのか不明瞭であることが多く、これが普及を妨げている一因である。 通常は音速と吸収が生体の弾性的性質の指標とされるが、生体試料は構造が複雑であるために超音波ビームが種々の撹乱を受け、音速を表す位相情報と吸収を表す振幅情報が混在してしまうことが多い。我々は以前より超音波の位相共役波の発生やそれを用いた画像生成に取り組hできた。 位相共役波とは、入射波と同一の波面を持ち進行方向が逆転した波（時間反転波）であり、超音波の位相共役波を実時間で発生させる素子は種々の方法で実現可能である。 今回、我々は生体試料やそのモデル試料に対し位相共役波の有効性を調べる実験を行ったので報告する。