医療の安全·安心を確保するための社会技術の確立

摘要

わが国における医療の質·安全への取り組みが“社会現象”と呼べるほどになったのは，10年少し前の1999年1月11日に横浜市大病院で発生した患者取り違え事件である。この1ヶ月ほど後の同年2月に都立広尾病院において，看護師のミスにより消毒液とヘパリンを取り違えて投与し患者を死亡させるという医療事故が起きた。広尾の事故に関しては，警察への届け出が遅れるなど病院ぐるみの“事故隠し”も問題となり，当時就任したばかりの石原都知事が遺族に謝罪している。この2つの事件を契機に，わが国における医療事故訴訟は約3倍に増え医療安全，医療の質に対する社会的関心が一気に高まった。