水素エネルギ一実用化に向けた技術開発及び安全対策の現状と展望

摘要

水素を利用する固体高分子形燃料電池の実用化は，自動車用，定置用，携帯情報機器用の分野において燃料電池技術開発が活発化していることから，早晩,初期の市場投入が可能な技術レベルに到達するものと見込まれる。 一方，本格的実用化の実現のためには，さらに抜本的なコストダウン並びに耐久性，性能及び信頼性の向上を図ること及び水素供給インフラの整備が不可欠である。既にいくつかの企業にとっては研究開発期間が長期化し，投資回収が遅れることが財務上の負担となってきている。 日本の産業技術開発を推進する役割を担うNEDOとしては，産業界の技術開発への取組みの現状を踏まえた技術課題の設定をすることが必要である。 世界的にもWEANETのような一貫した考え方が広まりつつある。米国の水素ビジョン（2002年）やブッシュ大統領のイニシヤティブ（2003年），2060年の水素社会への移行を描いた英国のエネルギー白書（2003年）などである。 水素供給に関しては，欧州では発達している天然ガスパイプラインの水素輸送への応周の検討など実用化に向けたインフラ整備の取り組みを始めた。 WE－NETのタスクで研究に関わっていた研究者たちの多くは，国内の水素プロジェクトの他に国際エネルギー機関などでの国際協力の場でも活躍しており，今後の本格的実用化に向けた開発を担うことが期待される。