軽水炉の確率論的安全評価(PSA)入門：第7回 公衆のリスクを評価するレベル3PSA

摘要

本連載講座の最終回では，原子炉施設の事故時に環境に放出された放射性物質による施設外への影響を定量化するレベル3PSAについて紹介する。 PSAの分野では本来，第3回に紹介した炉心損傷に至る事故シーケンスの同定とその発生頻度を評価するレベル1PSAおよび，第5回に紹介した多量の放射性物質が環境に放出される事故シーケンスの同定とその発生頻度，およびソースタームを評価するレベル2PSAを含めて，最終的に敷地外のリスクを定量化するすべての評価プロセスをレベル3PSAと呼ぶ。 しかし，ここで紹介するレベル3PSAの主要な部分は敷地外に生ずる影響の評価（環境影響評価）であり，狭い意味で確率論的事故影響評価(Probabilistic Accident Consequence Assessment)と呼ばれている。 ここでは，主にレベル3PSAをこの狭い意味で用いる。 レベル3PSAの結果は，米国の原子炉安全研究(WASH-1400)やシビアアクシデントのリスク評価(NUREG-1150)のような原子力発電所の潜在的リスクの評価だけでなく，施設の立地，防災等にも役立つ情報を提供する。以下では，レベル3PSA手法とその適用の現状にっいて概観する。