テチャ川流域住民の放射線疫学調査研究 II.個人被ばく線量の再構築

摘要

テチャ川コホート（TRC）には川水飲用者のみならず，テチャ川氾濫原の牧草地帯に放牧した牛のミルクの飲用者，川魚を食していた住民が多く含まれており，~(90)Sr や~(137)Cs等の放射性核種が体内に摂取されてきた。TRC において特徴的であることは，コホート構成員の多数に体内汚染追跡の標識で，体内に長く残留する~(90)Srが存在することであった。SrはCaと同じアルカリ土類元素であり，体内では骨に移行し沈着する。6歳未満の小児では歯のエナメル質の石灰化に伴ってエナメル質に沈着し，排泄されることなく完全に残留する。~(90)Srの骨中負荷量を測定する目的で，1974年以来NaI（Tl）とCsI（Tl）を用いたホスウィッチ型シンチレーション検出器4個を備えた全身カウンター（SICH-9.1）が使用されてきた。これは~(90)Sr-~(90)Yのβ線から生じる制動放射線を測定するものであり，TRCの約15，000人について32，000件以上の測定が行われた。歯のエナメル質中の~(90)Sr-~(90)Y測定は歯エナメル質β線カウンター（TBC）を用いて30，000件以上測定された。死亡者については約1500の検体骨中~(90)Sr試料の化学処理後の測定が実施され，Sr体内残留モデルを用いて，~(90)Srの身体負荷量が推定された。