人体の遺伝子保護·修復による放射線障害の防御

摘要

従来の放射線安全対策は線源の遮蔽，線源からの距離延長，被曝時間短縮で被曝線量を減少するのが基本である。そのため福島原発事故の環境除染には本誌の倉石武論文では6～9兆円の巨費を要すると試算している。しかし，本来の安全対策は人体の放射線障害予防にあり，人体側の放射線耐性向上の視点が欠落している。判りやすい例を挙げれば，DNAの基本構造が人体と同じ数種の放射線耐性菌は人の致死線量の1.5万倍の6万Gyでも生存できる。その理由は放射線影響からDNA を保護し，寸断されたDNAを元通りに修復できるからである。従って，放射線障害はDNAの保護能と修復能の大小で決まるのであって，同じ被曝線量でも，この能力を向上させる栄養学が進hでいる。食品中の放射能摂取限度基準値100Bq／kgは年間被曝線量を1mSv以下になるように策定されている。しかし，現在の宇宙ステーションでは，宇宙飛行士は毎日約1mSvの被曝を受けているが，クリカリョフ飛行士の804日滞在を始め25 人が一年以上滞在して健在であり，放射線障害で死亡した例はない。山崎飛行士は健常な2児を出産している。宇宙飛行士には重い放射線防護服は不可能で，宇宙食に放射線防護の工夫がある。