核拡散をめぐる国際政治：インド,パキスタンの核兵器開発を中心に

摘要

NPT体制が核拡散防止に多大なる役割を果たしてきたことは疑う余地がない。しかしそれでも，核拡散を完全に阻止することはできなかった。しかもNPT設立当時想定された日本やドイツのような先進国ではなく，インド，パキスタン，そして北朝鮮といった発展途上国に核兵器は拡散したのである。なぜか。その理由は極めて政治的である。つまり，これらの国にとっては，少なくともインドとパキスタンにとっては，あらゆる犠牲を払ってでも核兵器を保有することが国の存亡に関わる問題と認識されたからである。それは安全保障上の問題と，核兵器神話とでも呼べる国際政治におけるひとつのシンボルとしての意味づけの両方を含む。そこで本稿では，インドとパキスタンの核開発の経緯と両国の核政策を追い，核拡散の政治的意味を考察してみたい。