サイクロン式油分離器の性能予測

摘要

圧縮機の潤滑に用いる冷凍機油の流出は，圧縮機の信頼性を低下させるだけでなく，熱交換器の伝熱性能の低下や圧力損失の増加を招くため，空調機の性能を低下させる．冷凍機油の流出を防ぐためには，油分離器の高性能化が必要であり，これを実現する方法のひとつとして，サイクロン方式がある．サイクロン方式は，固気分離の分野で古くから発展してきた技術であり，メッシュ等の分離構造を設けることなく，重力の数百から数千倍の遠心加速度を用いて粉体を分離することができる．このため，比較的安価に製作することができるとともに、目詰まりによる信頼性の低下を生じないという特徴がある．本研究の目的は，空調用に搭載するサイクロン式油分離器について，冷媒流量の広い範囲で油分離効率を短時間に精度よく予測できる手法を提案することにある．具体的には，まず，窒素－油を用いて流入管から飛散する油滴の粒径分布を計測し，その結果から冷媒－冷凍機油における油滴の粒径分布を推定した．次に，広範な冷媒流量に対するサイクロン式油分離器の分離効率を予測するため，遠心分離と重力分離の両方をモデル化し，先に求めた油滴径と油滴の飛散位置を変数とするモンテカルロ法を用いて油分離効率を予測する手法を提案した．最後に，提案した予測手法を用いて，ビル用マルチエアコンの運転条件における油分離効率を予測し，実機性能との比較から本予測手法の妥当性を検証した．