浅層地中熱利用ヒートポンプ空調システムの実証試験－低コストの地中熱交換部の提案

摘要

近年,エネルギー不足が深刻になりつつあり,地球に対してクリーンかつ安全で持続可能なエネルギーが求められている. そこで地中熱利用が注目されている.地中深さ10m 付近では年間を通してほぼ一定の温度である. 要するに夏は冷たく冬は暖かいという特徴を持つ地中熱を利用する. しかし地中熱利用するためには設備の設置コストが高いという欠点がある.そこで建物など構造物の支えとなる基礎杭と熱交換器を兼用することでコストを安くできる. これは基礎杭に熱交換媒体である不凍液が循環するU チューブを取り付けた熱交換杭となる.この杭から地中熱を回収し,水冷式の地中熱ヒートポンプにより空調に用いる.ところで,エアコンなどの空調システムでは,空冷式ヒートポンプが多く用いられており,市場の約90%を占めている.しかし,外気温度と室内温度の差が大きいと運転能力が低下し,積雪地域や寒冷地域では冬季暖房時に除霜運転を行う必要があるため,運転能力が低下するといった欠点がある.一方で水冷式ヒートポンプは空気熱交換器の代わりに水熱交換器を利用しているヒートポンプである.特徴として,空冷式とは異なり,地中熱を熱源として利用しており,冬季暖房時にも運転能力が低下しない.本実証試験では,この空気熱ヒートポンプと地中熱ヒートポンプを融合したハイブリッドヒートポンプによる試験を行う.現在,この熱交換杭により地中熱を吸熱し,ハイブリッドヒートポンプを介して,建物の空調に用いるといったシステムが福井県のゆきhこ森田保育園に設置されており,その実証試験が行われている.