システム設計を支える1DCAEを活用した電子機器の熱設計

摘要

モバイル商品などのコンシューマー電子機器の開発においては，商品フィーチャの増加による発熱量の増大と，商品サイズの小型化が相まって，設計プロセスにおける熱設計に対する負荷が大きくなっている。さらに熱設計の難しさは，たとえば発熱量はLSI·電気設計者が，空冷ファンなどの放熱デバイスの配置·構造は構造設計担当が，その商品の実稼働モードはソフトウェア設計が鍵を握る，というように，設計問題の解決に複数領域のエンジニアの協調が必須である点にもある。一方で，商品の放熱特性は商品構造全体のバランスで形作られるので，その熱的なポテンシャルは設計構想段階での大枠のプランニング時にほぼ決定されるものであるが，早期段階では当然詳細な設計諸元がいまだ明確になっていないため，この情報が少ない条件下で素性のよい放熱構造に導くための検討·判断が必要になる。ここにも現場での設計作業として難しい課題が存在する。本稿では，これら問題に対して，システム設計を支える1DCAEを活用し放熱性能に加え，電子機器本来の機能も十分有する商品を実現する取組みの一例を示す。