遊び文脈が乳児の行動に対する母親の応答性に及ぼす効果－絵本遊び場面,おもちゃ遊び場面,何も使わない遊び場面の比較から

摘要

本研究では，生後9ヶ月児とその母親（10組）を対象に，絵本を用いて遊ぶ「絵本遊び場面」，おもちゃを使用した「おもちゃ遊び場面」，ツールを何も用いない「何も使わない遊び場面」（各10分）の母子相互作用を比較検討することで，遊びの文脈が母親の応答性［1］に与える影響を検討した。母親の応答性としては，その重要な下位構成概念である「子どもの行動と母親の反応の時間的接近」および「子どもの感情をうまく対処する反応」［2］を検討することとし，それぞれ「母親が子どもの行動に随伴して働きかける頻度」および「子どもの意図と一致した働きかけの頻度」と定義して測定した。その結果，母親が子どもの行動に随伴して働きかける頻度および子どもの意図と一致した働きかけの頻度については，絵本遊び場面と何も使わない遊び場面で差が見られなかったが，おもちゃ遊び場面に比べて絵本遊び場面および何も使わない遊び場面の頻度が有意に高いもしくは高い傾向にあった。このことから，絵本遊び場面と何も使わない遊び場面においては，母親の応答的な働きかけが比較的多く生じることが示された。