東西自動車塗装スケッチ自分史への試み 第81回

摘要

1978年ころにはホンダにも4本の乗用車塗装ラインが完成し,大衆車の「ホンダシビック」の輸出車と国内向けの専用ライン,そして標準車の「ホンダアコード」,ツーリングスポーツの「ホンダプレリュード」の塗装のラインアップがそろい，世界のユーザーニーズに合わせて生産能力の強化が続けられていた。 さらに,ホンダの国際化路線を進めるに当たり,特に北米で吹き荒れていたクルマの安全性や，商品性の寿命に対する消費者運動への適切な対応を視野に入れて,増産に傾倒した体制の陰に隠れて弱くなっていた品質保証体制の再構築を進めることが叫ばれていた。 そして野本田技術研究所の社長であった久米是志（第3代目ホンダ社長）さhをホンダの専務取締役に就任させ,商品の信頼性運動の旗振りを始めさせた。そのターゲットの中には,ユーザーの苦情に答えるための市場クレーム費用の徹底的な分析と対応策があり,また,昭和54（1979）年に完成したばかりの栃木PG（プルービンググランド一品質実証試験場で高速走行コースを中心とした施設）の活用，発売前の製品の信頼性検証の体制強化などが挙げられた。この矢面に立たされたのは,欧米の塩害地域で販売した車体の腐食や，塗装面の錆の苦情であった。 そして当初は，今までと変わらぬ「錆の苦情といえば何でも塗装技術者に任せておけばよい」との風潮であったが，やがて全部門の関係問題として取り組む方針が示され，我々塗装技術者の苦しい立場にも次第に明るさが戻り始めていた。