無機化学反応を利用した有価資源回収技術の開発

摘要

資源の乏しい我が国は.多くの資源を国外から輸入して 賄っているのが現状である。そのため国内産業の安定化の ために各種資源の安定確保は国策の一つである。新しい鉱 脈の探査?開発および国家間交渉による安定確保の努力が 進められている一方で，2004年にG8サミットで合意され た3Rイニシアテイブに基づき.様々な有価資源について 国内で資源循環を実現できる社会·工業システムの早期確 立が切望されている。廃棄製品中には様々な有価金属元素 が含まれていることはよく知られているが，この含まれて いる有価金属資源を再度工業原料として利用できる化学形 態に戻すことが，有価金属資源を循環させるためには必要 不可欠である。鉄，銅やアルミニウムについては.金属材 料における基幹元素であることもあり，採算のとれる資源 循環システムがおおよそ確立している。さらに金，銀や白 金に代表される貴金属類については，相場価格が高値安定 であり，回収することで十分な利益が期待できることから 実際に資源回収が行われている。しかし.たとえ国家戦略 的に備蓄が進められている金属元素であっても必ずしも実 際には資源回収が行われているわけではない。廃製品から の資源回収が実際にはなかなか進まない理由として，経済 性の確保が難しい点，すなわち処理コストが高く操業に見 合う利益が得られない点がまず举げられる。このような経 済的な理由だけではなく，技術的に高純度金属として回収 することが難しい元素もいまだに多く存在する点も理由の 一つである。廃製品や廃材からの金属回収技術の多くは， 金属精錬技術を応用したものであるため，回収する元素が 廃材の主要元素であれば容易に回収できるものの，微量元 素の場合は金属として分離回収することが難しい場合が多 い。このような廃製品や廃材に含まれる有価微量元素の回 収では，貴金属の場合のように酸等による抽出後に，目的 の有価金属元素を逐次的に析出させることによる回収が有 効と考えられる。本稿では，廃製品や廃材中に含まれる金 属資源の選択的溶解と析出反応を利用した資源回收技術 に，著者らの最近の結果を含め紹介する。