ナウマンの「予察東北部地質図」--予察地質図シサーズの紹介 その1

摘要

本図に引き続いて「予察東部地質図」（原田ほか，1887）が出版される。 ナウマン（山下訳，1885）や原田豊吉（1888）はこれらの予察地質図作成過程で得られたデータを基に日本全体の地質像を描き，その構造の成因を議論した。 1894年にはこのシリーズ最後の「南西部」が出版される。 そして，地質調査所創設後わずか十年余りの19世紀末には，これらの知見を総括した100万分の1日本地質図（地質調査所，1898－1899）が刊行されたのである。 東北地方でも1890年代に入ると20万分の1地質図幅が次々と出版されるようになる。こうした段階で，「東北部予察地質図ノ紬キハ未夕完全ナラス既二其再調査必要ヲ認メルニ至レリ」（農商務省地質局，1890）という主旨で再調査が行われ，訂正版（巨智部ほか，1902）が発行される。 訂正版では，"Mesozoic"が"Triassic"，'Jurassic"，"Cretaceous"に細分され，また"Gneiss"や"Gabbro－PeddotitかSerpentine"の凡例が新たに設けられたが，その一方で，"Crystalline schist"の凡例が完全に姿を消した。 予察地質図改訂の内容とその問題点については，本シリーズ紹介の最後に改めて取り上げたい。