プッ素の岩石学への適用-再訪-

摘要

火成岩ならびに変成岩中のフッ素の研究を始めてから30年近くが経った。 その臥90年代にはほとhど中断して他の研究を行っていたが，データだけはルーチン化して出していた。 本論を書くにあたって振り返ってみると，岩石学におけるハロゲンの挙動については十分に解明されたとはいえないまた，マグマ固結の際のハロゲンの挙動にはたいへh重要な意味があり，鉱物粒間の流体や溶液との関連で鉱床の生成などにも関係していて、最近ではむしろ鉱床学の面からのアプローチが多いよぅである。 また，シエラネバダや，エルツ山地の花崗岩類の研究で示されているように，フッ素の挙動には上部地殻のみならず下部地殻の情報が得られる可能性を秘めていることから，多くの研究者によってさらに研究が進められることを願って止まない。 イオン電極法は費用もかからず簡便であること，最近ではEPMAによる鉱物分析もF，Clも含めて行われるようになった。 性質の異なるFとClの変化を一つの鉱物の中で追跡することは鉱物の晶出と流体との関係を明らかにするのに大変有効でぁろう。私にも出来そうな研究も残っており，しぼらくはこの興味の尽きない元素についての挙動を追いかけてみたいと思っている。フッ素研究については，その端緒をつくってくださった一国雅巳先生，岩石学上の問題に関してご教示頂き，共同研究を勧めて下さった青木謙一郎先生，さらに石川賢一氏との共同研究に負うところが多かった。 記して感謝する。 また，本論の執筆を勧めてくださった石原舜三氏にも感謝の意を表したい。 　 本稿脱稿後，本誌5月号に小山内康人·吉村康隆（2002）：地殻内変成作用の高温眼界：超高温変成作用。地質ニュース573号，10－26。 が公表された。 この中で，高変成岩中の黒寧母におけるフッ素の役割が手際よく紹介されているので，参茅にされたい。