菱刈鉱山の開発および現況

摘要

菱刈鉱山は，鹿児島市の北東部に位置する（第1図）。 噶庳住工蚊南驻说菆訾工毪韦希桨矔r代のはじめで，当時の「菱刈」は伊佐地方の総称であった。 鎌倉時代に，藤原氏の苗裔に当る菱刈氏が，相良氏と連衡して先着の牛屎氏を駆逐し伊佐郡全体に号令した。 戦国時代には菱刈氏と島津氏の間で戦闘が続くが，菱刈氏が島津氏の軍門に下って以降は島津氏の直轄地となった。 1871年（明治4年）廃藩置県により鹿児島県に属し，1889年（明治22年）市町制の実施により菱刈村と太良村（後の本城村）が発足した。 菱刈村は，1940年の町制の実施と1954年の本城村との合併を経て今日の菱刈町に至っている。 「菱刈」の地名の由来は，和名類聚抄に「比志加里」と訓じ「比地菱多ク産セシ故其名ヲ得タリ」とある。 菱は，水底から茎をのばして夏に葉を水面に放射状にひろげる一年生の水草であり，今も貯水池等に自生しているが，明治時代までは川内川流域の低湿地に繁茂しており，その実を食したと伝えられる。菱刈地域の探鉱の歴史は，1750年代の馬越郷山田金山の試掘まで遡るとされており，その後断続的に小規模な試掘が実施された。 1903年頃から山田鉱山の採掘が行われたが，金山整備令（1943年）により中止された。 鉱脈は東西走向の3脈からなり，一番坑「孟宗火」は粘土質石英脈で細脈ながらも高品位であった（近藤，1986）。 生産された金量は定かではない。 1969年に布計鉱山（株）が鉱業権を買収したが，その後経営が悪化し，1973年の同社解散を機に当社の子会社である鯛生鉱業（株）が鉱業権を取得した。1981年に当社が鉱業権を買収し今日に至っている。以上のように，菱刈地域の探鉱には長い歴史があるが，現在開発されている主要な鉱床は，上述の山田鉱山の採掘対象鉱脈より更に地中深くに胚胎する潜頭性のものである。 山田鉱山旧坑は，現在採掘中の菱泉脈の上部延長に相当するが，鉱脈として連続してはいない。 1981年の鉱床発見は，以下に述べるように，近代的な探査技術を駆使した科学的探鉱の成果である。