帯水層でのCO_2貯留技術（高精度地中挙動予測手法の研究）

摘要

地層中において，超臨界状態で圧入されたCO_2がどのような状態で滞留しているのか，どのように移動するのか，どの程度帯水層に溶けるのか，どのような鉱物として固定されるのか，また，気体が微細な構造に取り残される残留ガストラッピングはどの程度気体を貯留層内にとどめるのかなど帯水層のCO_2の挙動については不明な部分が多い．また，圧入されたCO_2の移動をどのようにモニターをすればよいのか，CO_2の漏洩はどの程度発生するのか，漏洩に対するリスク評価はどのような指針で行えばよいか，事業化のためのビジネスモデルはどのように設定するかなど，地中貯留の事業化に対して開発すべき技術課題はまだまだ多い。 産総研が実施する「高精度地中挙動予測手法」の研究目的は，この喫緊の課題に対して解法方法を探してCO_2地中貯留の事業化に資する技術を開発することである．この「高精度地中挙動予測手法」の研究テーマ以外にも地中貯留の事業化にとって重要なテーマがある．このため，産総研では第3図の中にある「ナチエラグ·アナログによるリスク評価」の研究などの研究開発を進めているほか，地中貯留にて断層帯を通じた漏洩以外の主な原因として考えられている既存坑井などの人工物からの漏洩についても研究開発を実施している．この既存坑井からの漏洩は，ケーシングと地層との間を充填するセメントなどがCO_2酸性環境により劣化し，CO_2の漏洩の原因になると考えられているものである．このような漏洩に対しては，CO_2の環境に適したセメントの開発などの技術開発が行われている（山田ほか，2005）ほか，米国のZERT（Zero Emission Research and Technology）研究プログラムでは実際のCO_2を圧入した坑井の周囲を再び掘削して影響の評価を行っている（たとえば，Stauffer etal.,2005）ことから，産総研でも坑井周囲の環境を評価する手法の開発に着手している．このような地中貯留に係る研究は昨年度から開始されているものの，3年間という短い研究期間の中でCO_2の帯水層内での挙動の全貌を明らかにしなければならないため，地圏資源環境研究部門ならびに多くの機関の支援を受けて研究の推進を図っている．