鋼板表面における微小油部の微細構造と光反射特性: 表面検査における誤検出要因の研究

摘要

自動車のフェンダー，ドアパネル等に使用される合金化溶融亜鉛めっき鋼板（Galvannealed iron-zinc Alloy；以降「GA」）は，鉄鋼の主力製品であり，強度，プレス加工性，防銪性，溶接性など多くの項目に高い性能とその品質保証が求められる．品質保証項目の一つに表面欠略があり，鉄鋼メーカーにおいては，画像式の表面検査装置が広く導入されている汽検査対象の欠陥には付着物，異物，凹凸，色合いの異常など複数の種類があるが，最も重大な欠陥の一つにHg.1（a）に示すようなコントラストの低い模様状の欠陥がある．このような欠陥は，鋼を鋳込む際に混入または生成するCaO_2, SiO_2等の金属酸化物に起因すると考えられており，欠陥の下層に高い確率で金属酸化物が存在するFig.1（b）にこのような欠陥部のScanning Electron Microscope（以降「SEM」）による断面写真の例を示す．上半分の暗い部分は空間，下半分がGA合金層，表層下に黒く点在するオブジェクトが金属酸化物である．金属酸化物は鋼より硬いため，自動車メーカーにおける鋼板の加工の際にプレス内壁を損傷させて生産を大きく阻害する．従って，鉄鋼メーカー側ではFig.1のような欠陥を金属酸化物の指標として自社工程において検出し，金属酸化物の存在する部分の流出防止に努めている．