X線CT画像に基づく骨組織の個体別モデリング

摘要

生体内の骨に生じる力学状態は，バイオメカニクス分野を志す医学者や工学者にとってたいへh興味深い研究対象である．なぜなら，生体骨の力学環境に対する適応機能について検討することにより有用な情報が得られれば，整形外科や矯正歯科における新たな治療方法を確立することが可能となるだけでなく，工業分野においても非破壊検査技術の革新や新しい機能性材料の創生が期待できるためである．しかし，生体骨に対して機械的な実験を行うことは痛みや苦痛を伴うことが多く，倫理的な観点からも許容できないため非常に困難が伴う．そのため，X線CTやMRIなどの医用画像技術やコンピュータ技術の発達とともに，医用画像の3次元情報に基づいて骨体を個体別にモデル化し，力学状態を調べる研究が盛hとなっている．本稿ではまず，骨組織の個体別有限要素モデリング手法について概説する．次に，代表的な2つのモデリング手法について各々の特徴を述べる．最後に，骨組織をモデル化し，応力状態を解析した結果について紹介する．