放射線誘起表面活性(RISA)を用いた船舶·海洋構造物の耐食材防食技術に関する基礎研究－海水中におけるSUS304ステンレス鋼の耐すきま腐食性の向上

摘要

TiO{sub}2被覆を施したSUS304鋼の60{sup left}Co小型密封放射線源を裏面密着させた試験片，ならびに中性子照射により予め母材を放射化した試験片を用いて，人工海水中で腐食電位測定ならびに表面観察を行い，微弱放射線環境下で示されるRISAによる防食効果について検討した．得られた結果をまとめると次のようになる．(1) TiO{sub}2の被覆を施さない，あるいは施しても放射線を非照射条件とした試験片では，海水に浸漬して5日以内に腐食電位は-260mV vs. Ag/AgCl以下に卑化し，いずれもOリングとのすきま部において赤錆の発生を伴うすきま腐食が発生した．(2) TiO{sub}2被覆を施し60{sup left}Co密封放射線源を密着させた試験片，ならびに表面線量66および158μGy/hとして母材を放射化した試験片では，実験期間中の腐食電位の卑化，ならびにすきま部での腐食の発生が認められず，良好なすきま腐食の抑制効果が確認された．また，防食に必要な限界表面線量（閾値）は，今回の実験では66μGy/hであることがわかった．(3)今回の微弱放射線環境におけるRISAによるすきま腐食の抑制機構は，放射線照射による電位の卑化を伴わないことから，前報の強放射線環境における孔食のそれとは異なることを確認した．