先進安全船舶技術研究開発支援制度について－海事産業の生産性革命「i-Shipping（Operation）」

摘要

平成28年6月2日，政府は，「日本再興戦略2016」を閣議決定した．副題として「－第4次産業革命に向けて－」を掲げたこの政府方針においては，①新たな「有望成長市場」の戦略的創出，②人口減少に伴う制約や人手不足を解消する「生産性革命」，③新たな産業構造を支える「人材強化」という3つの課題が挙げられており，「今後の生産性革命を主導する最大の鍵は，IoT（Internet of Things），ビッグデータ，人工知能，ロボット·センサーの技術的ブレークスルーを活用する第4次産業革命」であると明記されている．時を同じくして，平成28年6月3日，国土交通省交通政策審議会海事分科会海事イノベーション部会は，「海事産業の生産性革命（i-Shipping）による造船の輸出拡大と地方創生のために推進すべき取組について」（答申）をとりまとめた．先進的な情報技術を活用し，設計，生産，運航の全てのフェーズで生産性革命を推進するとしたこの答申においては，世界の新造船受注量に対する我が国のシェアを2025年に30%まで引き上げるなどの目標を設定し，①新船型開発をスピードアップさせ，「性能で勝つ」，②生産の自動化を進めるとともに，「工場見える化」で現場のムリ·ムラ·ムダを発見して徹底的に排除することにより，「コストで勝つ」，③顧客（海運）にとっての船の生涯にわたる付加価値を追求し，運航の効率性や不稼働を防ぐ優れた保守サービスも含め「総合的な魅力で勝つ」こと，を目指すべきとされている．