多剤耐性結核の治療戦略と超多剤耐性結核菌の出現

摘要

結核菌の薬剤耐性は遺伝子の点突然変異により生じる．結核菌には各々の薬剤の抗菌活性にかかわる部位をコードする遺伝子があり，この遺伝子に変異が生じてその産物が変化すると薬剤が効かなくなるので，これを耐性遺伝子とよぶ．これまでに判明している結核菌の主な耐性遺伝子を表1に示す．関わる耐性遺伝子の数は薬剤ごとに異なり，たとえばリファンピシン（RFP）耐性はほぼすべてがrpoB遺伝子の変異によるものであるが，イソニアジド（INH）耐性は大部分を占めるkatG遺伝子変異による耐性のほかにinhA遺伝子，ahpC遺伝子の変異による耐性もある．分子生物学的手法により耐性遺伝子の変異を検出することが可能であり，薬剤耐性の迅速診断法として応用されている．