現地調査に基づくチーク人工林の水、炭素循環研究

摘要

チーク材は耐久性，抗虫性，耐水性，加工性の面 で優れており，家具，船舶，住宅の用材として用い られ，熱帯産の高級材の一つである1'2'。天然のチー クの分布域は.インド，ラオス，ミャンマー，タイ といったアジアの熱帯モンスーン地域とされている"。天然のチークは，主に混交落葉林（Mixed deciduous forest)と呼ばれる森林の一構成樹種と して生育しているため，上に挙げた4力国では，ふ るくから，混交落葉林から択伐するという形で， チーク材の生産がおこなわれてきた2)。その後，主 に1980年代の各国での禁伐令の施行により，現在 では，ミャンマー以外の国では，天然林からのチ一 クの択伐による施業はおこなわれていない2)。チ一 クは，造林による材の生産が比較的容易なことか ら，かっての択伐に代わって，現在のチーク材の生 産の主力は人工林によるものに移っている。現在で は，上記4力国だけでなく，インドネシアをはじめ とする他のアジアの熱帯域，中南米やアフリカの熱 帯域，オセアニア地域にも.チーク人工林が導入さ れるに至っている1ュ3)。 FA0の統計2)によれば，1970 年代には13,000 km2程度であった世界のチーク人 ェ林の総面積は，2010年には，少なく見積もって も43,464km2まで増加したとされている。この増 加の背景には，上で述べた各国の禁伐令が施行され た影響があると思われる。同統計でのチークの人工 林面積が大きい国を順に挙げると，インド（16,670km2),インドネシア（12,690km2)'ミャンマー（3,900 km2),ガーナ（2,140km2),ナイジェリア（l，460km2), タイ（1,280 km2)となっており2),アジア地域が世 界の人工林によるチーク材の生産において重要な位 置を占めていることがわかる。