東北タイの農家のための有用郷土樹種チ一ク 林業経営の振興に向けた研究開発

摘要

JIRCAS林業領域では2006年からタイ王室森林 局（RFD)と共同研究プロジェクトを行っている。 初めの5力年（2006-2010)については，有用郷土 樹種チーク、Tectona grandis)植林農家支援の基 盤になる農林複合経営技術の開発に関する研究，及 びサケラート試験地（ナコンラチャシマ県）でタキ アン、Hopea odorata)などの有用郷土樹種育成技 術としての複層林試験を行ってきた。その後，2011 年にはJIRCASプロジェクト「東南アジアにおけ る持続的利用を通じた森林管理、保全技術開発」の 一環として第2フェーズ（2011-2014)を開始し， チークの安定的林業経営の実現に向けて低コスト更 新手法などさらに突っ込hだ育成技術開発，マー ケット分析を，また森林の炭素積能力評価を通じて 持続的森林利用を促すための研究を進めつつある。 いずれも中小規模農家を対象とし，農業経営の一部 として，有用郷土樹種チークをも彼らの土地に植林 し，経営に組み込hだ農林複合経営を普及すること で生計を向上させるのみならず，減少してしまった 森林面積を郷土樹種で回復させて，農村を活性化す ることを目的にしている。チークは世界の高品質家 具材とされるが，その一方で天然林の減少と将来へ の危惧からチーク人工林造成への関心が高まってい る。そこには，チーク林経営が高水準の木材価格に 対して投入経費が少なく収益性が高いという背景がある。こうしたRFDとの共同研究プロジェクト開 始に際しての背景と第1フェーズの課題概要が本誌 73号に，そしてサケラート試験地で行つてきた複 層林試験の内容と結果が本誌83号にそれぞれ解説 されている。本報告では，第1フェーズで得られた 成果の一部と普及に向けた活動を紹介する。