表面改質と接触解析

摘要

表面改質技術の開発によって，トライボロジー特性に優れる多種多様な改質層を表面に形成することが可能になっている．表面改質の最も一般的な形態は，基材と異なる材料の薄膜コーティングであり，薄膜材料は基材に比べて硬いものと，軟らかいものに大別される．例えば前者には溶射や蒸着によってコーティングされるセラミックスがあり，後者の代表はMoS{sub}2やPTFEなどの固体潤滑剤である．硬質膜は，断熱·絶縁効果を狙って採用される場合もあり，条件によっては低摩擦を示すことから潤滑膜として利用される場合もあるが，一般的には耐摩耗性コーティングとして機能し，潤滑油と併用される．一方，軟質膜は，油潤滑下での使用もあるが，基本的にはそれ自体の潤滑効果を期待して用いられる．いずれの場合も，薄膜の摩耗によって基材が露出し寿命に至ることが多いので，寿命の観点からは厚い膜が好ましい．ただし，軟質膜の摩擦は厚さと共に大きくなるため，摩擦と寿命との兼ね合いから，μmオーダの膜厚で用いられることが多い·硬質膜については，溶射で100μmオーダの厚い膜をコーティングできるが，蒸着膜の厚さはそれに比べてはるかに薄いμmオーダであり，厚膜化が課題となっている．