金属空気電池の作動原理と研究動向

摘要

金属空気電池は，主にこの金属を負極とし，空気中に無尽蔵に存在する酸素と反応させてエネルギーを得るもので，リチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度，低コスト化に繫がるシンプルな構成，半開放構造に起因する高い安全性を特徴としている．一方，金属電極の大きな体積変化が原因となってサイクル寿命や充放電効率は不十分であり，リチウムイオン電池よりも古くから検討されているにも関わらず，蓄電池としての実用化例はほとhどない．現状は一次電池（主に補聴器用のボタン型亜鉛空気電池）としての利用に留まっているが，再生可能エネルギー由来の電力貯蔵や災害バックアップといった，低コスト化や安全性の優先度が高い大規模用途では，リチウムイオン電池に代わる蓄電池としての可能性があり，昨今，再び研究事例が増えている．本稿では，様々な金属材料を負極とする金属空気電池の作動原理と動向を紹介する．正極に当たる空気極については，構成や特徴が燃料電池の空気極と類似しており，別項で紹介される燃料電池の記事も参考にしていただきたい．なお，成形加工分野との関連性は特に触れていないが，アルカリ水溶液に安定な軽量なセル容器，効率的な空気の取り込み口，電極間の隔膜，大気や水分を制御する補機類といった領域において，開発要素があると考えられる．