ザ·フェイク：人工皮革「クラリーノ」

摘要

天然皮革は，その構造に由来する独特の感性が評価され，靴·衣料をはじめとして我々の日常生活のあらゆる用途に広く使用されている．一方で天然皮革を代替しようとする試みも古くからなされ，織布に硝化綿を塗布したパイロキシンレザーに始まり，その後，織布に塩ビレザーを貼り合わせて作ったビニルレザーが開発され，さらにその改良品としてナイロン系，ポリウレタン系の合成皮革が開発された．しかし，塩ビレザーや合成皮革は，天然皮革の性能（機械的，機能的性質，耐久性あるいは感覚的性能）に遠く及ばず，天然皮革の代替素材としては十分な性能を有していなかった．一方，わが国では天然皮革の価格の上昇，供給の不安定なことも相まって天然皮革の本格的な代替素材としての人工皮革開発の機運が高まった．