低木樹種2種の根系による崩壊防止力の検討

摘要

台風時の豪雨や強風は，倒木や斜面崩壊をもたらす。これらの崩壊に対する樹木の抵抗力は，土壌中の榭木根によって発揮 される。本研究では，高木樹種のスギと，シカ不嗜好性で低木樹種のァセビ，ミツマタの引き抜き抵抗力の違いを明らかにするために，根の引き抜き試験を実施した。根直径（D)と引き抜き抵抗力（T)の関係式（T=aXD", a ：回帰係数）を構築し，根直 径10 mmのときの引き抜き抵抗力を算出したところ，スギ1012.3 N>ァセビ844.3 N>ミツマタ200.1Nの順であり，低木榭種 であるミツマタの引き抜き抵抗力は小さかったものの，低木榭種のァセビは高木樹種スギと比較して大差はなかった。また，土壤 断面積lm2あたりの断面抵抗力（引き抜き抵抗力の合計値）は，スギ26.8kN>ァセビ15.1kN>ミツマタl.OkNの順であった。 これらのことから，二ホンジカ生息域において，シカ不嗜好性で低木樹種のそれぞれの特性を活かした目標林に誘導することで， 崩壊防止機能を向上できる可能性が示唆された。