規制緩和からの転換はなるか一金融規制の現局面

摘要

サフプライム問題に端を発する世界的な金融危機は、百年に一度といわれるほどの打撃を国際経済に与えました。今先進諸国では、危機の再発防止に向けた枠組みの整備が喫緊の課題となつています。そうした中、政策形成の現場を中心に、金融機関に対する規制の在り方を見直すべきではないかとの機運が高まりつつあります。金融機関の行動の制限が、なぜ危機の再発防止につながると考えられているのでしょう。その背景には、金融機関に対する過度の規制緩和が今回の事態を招いたとの認識が存在します。今月は、1980年代に始まった金融自由化が危機へ転化していく過程に焦点を当てつつ、金融規制の現局面について説明します。 金融の規制緩和は、30年ほど前にイギリスとアメリカで始まりました。^年代初頭、日本や旧西ドイツが石油危機の痛手から急速に立ち直る一方、アメリカやイギリスは景気低迷に悩まされていました。こうした中、二ューョークやロンドンといった金融業の国際的中心地を擁するィギリス.アメリカの政府は、いわば自らの「得意分野」である金融業の活性化を通した経済成長を目指し、金融機関に対する規制を緩和し始めました。自由な競争と競争を通した自然淘汰(とうた)こそ、金融業を強化.活生化する道であると考えられたのです。