超音波バイオテレメトリーの実海域における 周波数と受信距離の関係

摘要

超音波バイオテレメトリー(以下:テレメトリー)は, 超音波発信機(以下:ピンガー)を調査対象生物に装着 し, 超音波受信機によって信号を受信することで生物の 行動を追跡するシステムである。テレメトリーは, 主に 追跡型, 設置型, 音響測位型の三方式に大別される"。 テレメトリーで使用されるピンガーは, 追跡する個体数 や追跡方式によってコード化ピンガーとコンティニァスピンガーの2種類が使い分けられている。コード化ピン ガーは, 複数のパルスを一組としたコードを用いることで個々を識別する。そのため, コード化ピンガーはコー ドが重なると個々を識別できなくなるといつた問題があ る。コンティニアスピンガーは, 設定された一定の間隔 で単パルスが発信されるため, 使用する周波数を変える ことで個々を識別する。そのため, 他のピンガーのパルスと重なつた場合でも識別可能となる。一般に水中では, 周波数が低いほど減衰が小さくなるとともに雑音レベルが高くなることから, 情報伝搬にはほ15-300kHz程度の 超音波が使われてきた。単一の周波数を使用するコ一 ド化ピンガーの場合, 周波数による伝搬距離への影響は 無いと考えられる。しかし, 使用する周波数を変えることで個々を識別するコンティニァスピンガーの場-合，周 波数による受信距離への影響は否めない。これまでにも 広くバイォテレメトリ一を使用した研究が行われてきた が，問題とされる周波数と減衰の関係を実際の海域で検 証した例は見られない。テレメトリーによって得られた 結果を適切に評価するためには，これらの関係を明らか にすることは必要不可欠といえる。そこで，本研究では， 使用する周波数による受信距離への影響の有無を明らか にすることを目的として室内での水槽実験及び実海域で の実験を行った。