藻場回復活動の持続に何が必要か？—人づくり，技づくり，流れづくり一

摘要

磯焼け対策の名のもとに行われてきた研究や事業は数 多い，残念なことに藻場が回復し維持された例 は極めて少ない。その理由としては，①急速な沿岸環境 の悪化，②磯焼けに対する認識の誤り，③回復手法の選 択の誤り，(4)漁業の担い手の減少，⑤回復計画'作業に 開する知見の欠如，(6)取り組み体制の不備，⑦経済的価 値の低い食害生物の利用の停滞，などを挙げることができる。このような状況で，2007年2月には「緊急磯焼 け対策モデル事業」（2004-2006年度）の成果を踏まえ て「磯焼け対策ガイドライン」がまとまり，「順応的 管理」の考え方が導入され，それに従い対策のフローが 示された。これにより，漁業者（獲ることを専門とする） が主体となつて取り組むことができる食害型の磯焼け(特に，ゥ二が高密度に分布するゥニ焼け）を中心に， 磯焼け対策の基本的な方針，手法，必要な情報や体制な どが明確に示された。しカゝし，藻場を回復、維持し，さ らに回復域を拡大していくためには，漁業を生業とする 漁業者が比較的取り組みやすい食害型の磯焼けであって も，持続的な活動が必要である。また，全国各地の磯焼 けは，海域の地形，海洋特性，生物の種組成，あるいは 沿岸の開発、利用状況によつて多様であり，食害型の磯 焼けもゥニだけが原因の単純な現象だけでなく ，ゥニ + 植食性魚類，ゥニ+小型巻只，あるいは植食動物の関与 の有無に関わらず，海域静穏化/浮泥堆積が主因となつ ている場合もある。本稿では，藻場の衰退が多様化 している現実を踏まえ，ガイドライン策定後の動きを簡 単に紹介したうえで，今後，持続的な磯焼け対策に向け て検討すべき内容を整理した。