市町村で描ぐ森林'林業のマスタープラン 東京大学大学院農学生命,研究科教授

摘要

近頃、新聞紙上でも森林環境税ゃ森林バンクが話題となっている。森林バンクは所有者が管理できなくなつた森林を市町村が集約し、意欲ある経営者に貸し出して管理させる新たな制度であり、その財源として森林環境税が構想されているのである。市町村はまさに森林管理の中心的存在になろうとしている。このトレンドは昨今に始まったものではなく、振り返れば平成一〇年、五条森林をもつすべての市町村に市町村森林整備計画が義務づけられ、伐採届の受理や森林施業計画の認定が市町村に下ろされたあたりから始まる。平成一三年には森林.林業基本法制定と同時に森林法が改正され、市町村森林整備計画において重視すベき機能に応じた森林の区分(ゾーニング)を市町村が実施することとなった。そして平成一一一年には森林,林業再生プランが策定され、森林施業計画は森林経営計画となり、市町村森林整備計画は地域の森林.林業に関するマスタ—プランと位置づけられた。こうして平成以降は森林管理.林業振興の中心的役割が都道府県から市町村へと下ろされてきた。これは政府が進める規制緩和、地方分権といつた基本方針にも沿うもので、今後とも推進されていくものと思われる。また戦後から国を挙げて取り組hできた国土緑化や森林資源造成が概ね達成され、今後は森林を地域資源として保全および利活用を図つていく時期に入つたこともこの背景にはある。