長野県上田市における家庭養護婦派遣事業の 「運営」に関する一考察

摘要

長野県上田市は，戦後日本社会においてホームヘルプ事業を公的に発祥させた地方都市の一つとして注目される。1950年代から60年代当時の同市の事業展開を支えていたのは，市社協関係者や家庭養護婦， さらには，民生委員やボランティアなどの一般市民であつたが，その運営の鍵は，財源の確保'運用にあつ たといっても過言ではない。家庭養護婦派遣事業は，事業開始以前から補助金や寄付金を巡り，たびたび議 論されている力s，その典型例といえたのが，1956 (昭和31)年8月15日の同市未亡人会（さっき会）理事 会における論議であった。この背景には，ホームヘルプを担う家庭養護婦と近似の職種の一つである家政婦 との棲み分けの問題や役割分担の明確化などの必要性があつた。本稿の目的は，上田市を起点とした家庭養護婦派遣事業の展開と金銭推移との関係に着目し，同市のホ一 ムヘルプ事業の初期形成についてより重層的に検討することにある。