農場HACCP認証養豚農場における管理獣医師の役割

摘要

農林水産省が公表した畜産農場における飼養衛生管理取組認証基準に基づき，民間による農場HACCP認証手 続きが平成23年から開始された.政策目標として平成30 年までに認証農場を500戸にすることが揭げられている が,平成27年8月末の段階では64農場が農場HACCP認 証農場として認証を受け，そのうち養豚関係の農場は30 農場にとどまつている.認証を受けた養豚場のほとhど が大規模農場であり，小規模の家族経営的な農場にお ける農場HACCP認証農場は非常に少ない.しかしなが ら，日本における養豚の現状は，そのほとhどが中小規 摸の一貫経営農場であり.生産者の高齢化も進hでお り，設備コストが高いためォーィン、オールァゥトの生 産方式を取り入れることが難しく，さらには糞尿処理の コストも高いため洗浄、消毒が不徹底な農場が多く存在 している.また.こうした農場は生産だけで精一杯で， 衛生認識も低いのが現状であり，獣医師の関与も少な レ、.しかし.こうした農場であっても.管理形態を精査 すると，農場HACCPに近い生産がおこなわれており， 実際に農場で行われている作業などが，マニュアル化さ れていないだけであることが多い.昨年全国的に大流行 した豚流行性下痢（PED)の発生に伴い，養豚農家の 衛生レベルが飛躍的に向上したことは事実であり，そ の結果として.一般社団法人日本養豚開業獣医師協会 (JASV)と国立研究開発法人農業、食品産業技術総合 研究機構動物衛生研究所が共同で実施しているベンチ マーキング（Pig info 、参加農場数104)の解析結果を見 ると，PEDの侵入していない農場における離乳後事故 率の減少が認められ，生産成績が向上しており，衛生意 識の高い今こそ農場HACCPの導入のチャンスではないかと考えており，JASVでは生産者向けの農場HACCP のセミナ一の開催や来年2月に秋田で開催される日本獣 医師会獣医学術学会年次大会において，養豚獣医療に関 するシンポジウムの開催を企画し，その中で養豚獣医師 による農場HACCPの取り組みに開しての事例の発表を 予定している.農場HACCPを養豚農場に導入するに当 たり，その目的として，対外的な信用度が増す，取引先 に対して優位に立てるなどのメリットが挙げられる力5,