自分自身の身体を感じるための脳内メカ二ズム

摘要

自己身体の知覚は主観的体験として2つの側面を持つ.例えば自分の手を見たとき,網膜から脳に入力される手の3D画像は,他の物体と何ら違いのない,空間の一部を占有する"物体”である.これが身体の外部的知覚の側面である.しかしそれと同時に,体性感覚的入力と合わさって."この見ている手は自分自身の一部である"という,見ている物体に対する"自己所有感”が知覚される.これが自己身体の内部的知覚の側面である.私たちは自分自身の身体をどのように脳内に表現し.自己身体特異的な知覚を形成しているのだろうか?これまで身体性というテーマは哲学が扱う領域の問いであり,科学的?客観的に研究することは困難であると考えられてきた.しかし,健常者?脳損傷患者における行動実験,機能的磁気共鳴画像(fMRI)実験,サルの電気生理実験などが合わさって,徐々に科学的に探究しうる問いであることが示されてきている.本稿では,身体所有感に代表される自己身体の知覚研究について概説する.