細胞競合による勝ら組/負け組細胞の支運命決定の制御

摘要

細胞競合（cell competition)とは．増殖が速く生存能の高い／ 適応性の高い細胞群（winners：勝ち組）と．増殖が遅く細胞死によって排除される／ 適応性の低い細胞群（losers：負け組）とが互いに細胞非自律的に競合し．増殖，生存．分化が統合的に制御されることで，最終的に一定の大きさと機能を持つ器官が形成される現象として定義される．その機構は，多細胞生物の組織構築過程における種々の細胞の運命決定ばかりでなく，癌発症初期における癌前駆細胞の組織からの排除．成熟癌細胞の優勢的な増殖．幹細胞二ッチにおける高適応性の幹細胞の選択などにおいて，広く重要な役割を果たすと考えられている．本稿では，細胞競合制御因子として見いだされた．癌遺伝子c-Mycのショウジョウバエホモ□グdMycにより制御される細胞競合の話題を中心に．多細胞生物において器官発生．再生，癌などの過程に関わる普遍的な生命現象であると考えられる細胞競合について考察する．