サリドマイド催奇性,標的因子の同定

摘要

薬剤などの生体反応を制御する低分子化学物質は，生体反応の調節メカニズムやネットワークを解析するためのすぐれた道具として使うことができる．それには4ヒ学物質が特異的なターゲットとしてじかに結合し,その機能を変換する標的タンパク質を同定することカ必要になる． サリドマイドによる悲惨な薬禍の歴史は多くの人が知るところだが,これもまた．複雑な生物の形作りの分子ネットワークに薬という機能の変換分子が結合した結果である．本稿では．サリドマイドという薬の標的タンパク質の精製を突破口として． それと一緒に働く共役因子を手掛かりに． なぜこの薬が手足や耳の発生障害を引き起こすのか，という半世紀にわたる謎に最初の答えを得るまでの私たちの道のりを紹介したい~(1)).