嗅覚研究において誰もが重要な一歩であったと認識しているのは,1991年のRichard Axel と Linda Buck両博士による嗅覚受容体遺伝子の発見であり,それからほぽ20年の時間が経過した. この20年間の研究によって,PA覚受容体遺伝子の発現制御や,RR覚神経回路の形成のメカニズムが徐々に明らかにされてきた. 次の飛躍のためには何が必要なのかを模索する中で,私たちが2007年11月に報告した論文は,浦乳類が匂いを嗅いだ時にどのように感じるのかは遺伝的に決められていることを初めて示すものであった.この発見は,哺乳類の情動や行動の少なくとも一部は遺伝的プログラムによって規定されている可能性を示唆していた.本稿では,匂いに対する嫌悪反応や恐怖反応を先天的に制御するPA覚神経回路の発見と,その後の嗅覚研究の展開について紹介するとともに,PA覚研究の特徴や,嗅覚研究が脳の理解に与えるインパクトを解説したい.
展开▼