人工臓器開発における化学工学の役割

摘要

失われた臓器·組織の機能を補助·置換する医療の一つに人工臓器が挙げられる．人工臓器とは，「臓器の機能不全を代行するために，人体に適用される人工的機器」と定義づけられる．1914年にAbelらが膜を用いた血液透析装置すなわち膜型人工腎臓の開発を行った頃にこの概念が生まれてきたものと考えられる．以降，汎用高分子材料や金属?セラミックスなどの人工材料を成形，加工することによる人工臓器開発が進められてきた．既にポンプの役割を持つ人工心臓や補助人工心臓，また膜を介した物質交換を行う人工肺?人工腎臓などは臨床現場において実用化がなされている．