注目それる研究開発の創成

摘要

北海道大学大学院理学研究院の角五彰准教授,井上大介博士,佐田和己教授,岐阜大学工学部応用物理コースの新田高洋准教授,東京工業大学情報理工学院のGreg Gutmann助教,小長谷明彦名誉教授,コロンビア大学医用生体工学部のHenry Hess教授らの研究グループは,自走する約1億個の分子機械の集団運動を,単純な物理刺激で制御することに成功した.群れ(集団)で行動する鳥や魚,細胞などはさまざまなスヶールで自発的にパターンを形成する.タンパク質からなる分子機械も,集団となることでさまざまなパターンを形成する.これらの分子機械は,電気や熱のエネルギーではなく,化学エネルギーで駆動するのが特徴である.集団運動する分子機械は,優れたエネルギー変換効率と高い比出力特性を有しているため,分子群ロボットや超小型デバイスなどの動力源として期待されている.しかし,これまでそのょうな分子機械の群れのパターンを制御することはできていなかった.本研究では,自走する約1億個の分子機械に伸張や圧縮などの単純な物理刺激を加えることで,群れのパターンを制御できることを見出した.また,この群れのパターンをかき乱しても,直ちに自己修復されることもわかった.本成果は,省エネルギーな小型デバイスの実現を前進させるだけでなく,研究グループが開発してきた分子群ロボット制御ヘの応用も期待される.なお,北海道大学が集団運動する分子機械の制御法を考案?実証し,岐阜大学,東京工業大学,コロンビア大学がコンピューターシミュレーションなどにょる理論構築を担当した.また,本研究成果は,アメリカ化学会刊行ACS Nano誌に掲載された.