井上琢智『黎明期日本の経済思想ーィギリス留学生.お雇い外国人.経済学の制度化』

摘要

近 代日本についての経済学史研究については，いくつかのアプローチがあるだろう。その第1は，経済学を普遍的な性質をもった科学と考え，その発展を考察するための便宜的な限定として「近代日本」という限定を付すことである。もちろh，この限定が意味をもつのは，日本の経済学が世界の経済学からある程度分離されていたとか，これまでの経済学史研究では相対的に無視されていたとかの事情があるからである。それに対して，第2のアプローチは，経済学を歴史的.社会的背景をもった知的活動の所産とみなし，思想史的視角から日本における経済学の発展を考察することである。